「あの仕事は、あの人にしかできない」。そういう状態がいくつもある会社は、危ういものです。その人が休めば仕事が止まり、辞めれば会社が回らなくなります。本人にとっても、休めない職場はつらいものです。
一人が一つの仕事を抱え込む状態を、属人化といいます。これを解きほぐして、複数の人が同じ仕事をこなせるようにするのが、多能工化です。
日本では、休みを取りにくい職場がまだ多く残っています。年次有給休暇の取得率は令和6年で66.9%。少しずつ上がってはいますが、「自分が抜けると回らない」ために休めない人は、いまも珍しくありません。
出典:厚生労働省「令和7年 就労条件総合調査」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/25/index.html
一人にしかできない仕事があると、その人は休みづらくなります。体調を崩しても出てこざるを得ない。連休も取れない。これでは疲れがたまり、いずれ辞める引き金になります。会社にとっても、その人が抜けた瞬間に業務が止まるのは大きな危険です。属人化は、ありがたい状態ではなく、なくしていくべき弱点です。
多能工化の第一歩は、現状を見える化することです。社員を縦に、業務を横に並べた表を作り、それぞれが「できる・教われる・できない」のどれかを書き込みます。これをスキルマップといいます。作ってみると、特定の人に丸がつきすぎている業務が一目で分かります。そこが、真っ先に手を打つべき場所です。
「できる人が一人だけ」の仕事は、たいてい手順が頭の中にしかありません。そこで、その人にやり方を口で説明してもらい、AIに「この内容を、初めての人でも分かる手順書にして」と整えてもらいます。文書になれば、教える側の負担が減り、教わる側も自分のペースで覚えられます。動画を撮って、それを補足に使うのも有効です。
一気に全員が何でもできるようにする必要はありません。重要な業務から順に、「代われる人をもう一人」育てていきます。ふだんから少しずつ手伝ってもらい、いざというときに回せる状態をつくる。そうすれば、誰かが休んでも慌てません。休みが取りやすくなれば、社員は長く働きやすくなります。属人化をなくすことは、定着の土台づくりでもあります。
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