試用期間中なら、合わなければいつでも辞めてもらえる。そう思っている経営者は少なくありません。しかし、これは法律上、大きな誤解です。試用期間中であっても労働契約はすでに成立していて、本採用を見送ること、つまり本採用拒否は、法的には解雇と同じ扱いになります。知らずに進めると、後で不当解雇を主張され、思わぬトラブルに発展します。
試用期間を「お試しだから自由に辞めさせられる期間」と考えるのは、法律上の誤解です。本採用を見送ることは、解雇と同じルールの中で慎重に扱う必要があります。
出典:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」(労働契約法第16条・労働基準法第20条)https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/keiyakushuryo_rule.html
試用期間は、社員としての適性を見極めるための期間です。会社には契約を解約できる権利が留保されていますが、その権利を自由に使えるわけではありません。本採用拒否が認められるのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当だと言える場合に限られます。単に「期待外れだった」「仕事が遅い」といった主観的な理由だけでは、不当解雇とされる可能性が高いのです。
後でもめないために大事なのは、記録です。遅刻や欠勤が多い、指示に従わない、ミスが続く。こうした問題があったなら、その事実を日付入りで書き残しておきます。口頭で注意しただけでは、後から「そんな指導は受けていない」と言われかねません。さらに、問題点を本人に伝えて、改善する機会を一度も与えないまま拒否すると、それ自体が問題になりやすいです。注意し、直す機会を与え、それでも改善しなかった、という流れを記録で示せるようにしておきます。
本採用を見送る場合も、解雇の手続きが必要です。原則として、少なくとも30日前に予告するか、予告できない分の日数に応じた手当を支払う必要があります。ただし、採用から14日以内であれば、この予告は不要とされています。本人から求められれば、拒否の理由を書いた書面を渡す義務もあります。こうした手続きを飛ばすと、それだけでトラブルの種になります。手順を守ることが、自社を守ることにもつながります。
本採用拒否は、いざとなると手間もリスクも大きいものです。だからこそ、採る前の見極めにこそ力を入れる価値があります。面接で仕事の現実を正直に伝える、短い体験の機会を設ける、活躍している社員の特徴から採用の基準を考える。入り口で丁寧に見極めておけば、試用期間で頭を抱える場面そのものを減らせます。それでも本採用を見送らざるを得ないときは、自己流で進めず、退職勧奨による話し合いでの合意も含めて、社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めるのが安全です。試用期間は「お試しだから自由」ではなく、慎重に扱うべき期間だと心得ておいてください。
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