入って間もない人は、小さな不安や疑問を抱えています。こんなことを聞いていいのかと迷い、誰にも言えないまま抱え込む。それが積もると、辞めたいという気持ちに変わります。直属の上司とは別に、気軽に相談できる先輩がいれば、その孤立を防げます。これがメンター制度です。
新規学卒者の3年以内離職率は大卒で33.8%、従業員5人未満の事業所では57.5%にのぼります。入社して間もない時期の離れやすさは、規模の小さい会社ほど切実です。
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html
メンターは、評価をする直属の上司ではなく、別の部署の少し先輩が務めるのが基本です。利害のない斜めの関係だからこそ、上司には言いにくい悩みも話せます。厚生労働省も、メンター制度の進め方をまとめたマニュアルを公開しています。仕事の指導というより、気持ちの支えになることが役割です。
出典:厚生労働省「女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000106269.pdf
ただ担当を決めただけでは、メンター制度は続きません。月に一度は話す時間をとる、何を話すかの例をあらかじめ示す、といった後押しが要ります。メンターになった人も、最初は何を話せばいいか戸惑います。話すテーマの例や、振り返りの進め方をAIに用意させておくと、負担が軽くなります。
後輩の面倒を見るメンターには、手間も気づかいもかかります。その役割をきちんと評価し、ねぎらうことが欠かせません。メンター本人が孤立しては元も子もありません。担当者どうしが情報を交換できる場をつくると、悩みを抱え込まずに済みます。
メンターと新人の組み合わせも、うまくいくかどうかを左右します。年齢や立場が近すぎても遠すぎても、話しにくくなることがあります。性格の相性もあります。最初に決めた相手が合わないようなら、無理に続けず変える柔軟さも必要です。誰をメンターにするかを選ぶときは、面倒見の良さや聞き上手かどうかを見ます。仕事ができる人が、必ずしも良いメンターとは限りません。新人がいちばん安心して話せる相手は誰かという目で、組み合わせを考えてみてください。
早期離職は、能力の問題よりも、孤立から起きることが多いものです。相談できる相手が一人いるだけで、新人は安心して仕事を覚えられます。お金のかからない、それでいて効く定着策として、メンター制度を考えてみてください。焦らず、その新人に合った形を一緒に探していく姿勢が、長く続くメンター制度をつくります。
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