「この会社にいて、自分は成長できるんだろうか」。社員がこう思い始めると、辞める準備が始まります。給与への不満より、将来が見えないことが原因で辞めていく人は、実は少なくありません。これを防ぐのが、キャリアの見通しを示すことです。
2024年版中小企業白書によると、「キャリアプランの明確化」に取り組んでいる中小企業は3割程度にとどまっており、自身が成長する将来像を描けることが働き続けるモチベーションにつながると指摘されています。賃上げや業務分担の見直しに比べて、手つかずの会社が多いのです。
中小企業庁「2024年版中小企業白書 第2章第1節」https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b2_1_1.html
リクルートの調査でも、キャリアパスの明確化や公正な評価制度が定着率に寄与し、若年層が定着できている企業とできていない企業の間には22.7ポイントの差があることが分かっています。将来が見えるかどうかが、辞めるか残るかを左右しているのです。
リクルート「中小・中堅企業の人材課題に関する調査(人材定着編)2024年」https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20240927_work_01.pdf
キャリアパスと聞くと、大企業の複雑な等級制度を思い浮かべるかもしれません。中小企業はそこまで作り込まなくていい。大事なのは「この会社でがんばれば、こうなれる」という階段を、目に見える形で示すことです。
まず、今の仕事を段階で整理します。入社直後にできること、3年目に任されること、5年経って就けるポジション。これをAIに手伝ってもらいながら、3段階か4段階の階段表にする。ベテラン社員の実際の歩みを参考にすれば、絵空事ではない、自社のリアルな道筋ができます。
それぞれの段階で必要な力も言葉にします。次の段に上がるには何ができればいいのか。AIに整理させて、社員に見せる。すると社員は「次に何を身につければいいか」が分かり、目標を持って働けます。
他社の階段表をそのまままねる必要はありません。AIに一般的な例を出させたうえで、自社に合わない部分を削る。小さな会社だからこそ任せられる幅広い仕事や、自社にしかない役割を盛り込むほうが、社員には魅力的に映ります。
面談での活用も有効です。階段表を見ながら「今どの段にいて、次にどこを目指すか」を社員と話す。AIに面談の質問例を出させれば、何を聞けばいいか迷いません。年に一度の評価面談とは別に、こうした対話を重ねることが定着につながります。
中小企業は、社長や上司が社員一人ひとりと近い距離にいます。だからこそ、キャリアの階段を一緒に描き、その歩みに伴走しやすい。給与だけでは引き止められない人も、成長の実感があれば残ってくれます。
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