「辞めます」と言われたときには、もう気持ちは固まっている。社員の退職は、たいてい突然に見えて、実は前から小さなサインが出ています。それを拾えるかどうかで、引き止められるか、手遅れになるかが分かれます。
厚生労働省が2025年10月に公表したデータでは、大学を卒業して就職した人の3年以内の離職率は33.8%でした。業種によって差は大きく、宿泊業や飲食サービス業では大卒で55.4%、高卒で64.7%にのぼります。3年で3人に1人、業種によっては半分以上が辞めていく。中小企業にとって、一人の退職が現場を直撃するだけに、見過ごせない数字です。
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(労働政策研究・研修機構まとめ)https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2025/12/kokunai_02.html
退職のサインは、いろいろな場所に散らばっています。残業時間の急な増減、有給の取り方の変化、日報の文章が短く事務的になる、面談での口数が減る。一つひとつは小さくても、集まると意味を持ちます。問題は、社長や管理職が日々の業務に追われて、こうした変化に気づく余裕がないことです。
たとえば、毎月の面談メモや退職した人へのアンケートを、これまでの分もまとめてAIに読ませると、辞めた人に共通するパターンが見えてきます。入社半年前後で不満が増える、特定の部署で同じ理由が繰り返される。こうした傾向が分かれば、どこに手を打てばいいかがはっきりします。
日報や週報の活用もできます。社員が書いた文章をAIに渡し、前向きな言葉と後ろ向きな言葉のバランスがどう変わってきたかを見る。ある時期から愚痴や疲れを示す言葉が増えていれば、面談の優先順位を上げる目安になります。あくまで会話のきっかけをつかむための材料で、AIが「この人は辞める」と決めつけるわけではありません。
勤怠データと組み合わせるのも有効です。残業が急に増えた人、逆に急に減った人、休みがちな人を、AIに毎月リストアップさせる。気になる人がいたら、辞表が出る前に声をかける。たったこれだけでも、引き止められる確率は変わります。
大切なのは、サインに気づいたあとの一歩です。AIが拾った兆しを見て、社長や上司が直接話を聞きに行く。データはあくまで、その会話を早く始めるための合図です。
退職は、起きてから対応しても手遅れになりがちです。辞める前の小さな変化を、人の感覚だけに頼らず、AIの力も借りて拾っていく。それが、せっかく育てた社員を手放さないための現実的なやり方です。
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