パートを募集しても応募が少ない。採用できても、年末になると「もう今年は働けない」とシフトを減らされる。この働き控えの裏には、年収の壁があります。仕組みを知っておくと、募集の出し方も人の活かし方も変わってきます。
年収の壁とは、収入が一定の額を超えると税金や社会保険料の負担が生まれ、手取りが減ってしまう境目のことです。代表的なのが社会保険の106万円と130万円です。この額を超えると保険料の負担が発生するため、手取りの目減りを嫌って働く時間をあえて抑える人がいます。これが、繁忙期に人手が欲しいのにシフトに入ってもらえない、という事態を生んでいます。会社側も保険料を折半で負担するため、壁を意識するのは働く人だけではありません。とくに製造や小売、飲食のように、パートやアルバイトが現場を支える業種ほど、この働き控えの影響は大きく出ます。
この壁の仕組みは、いままさに見直されている最中です。2025年に成立した年金制度の改正により、106万円の壁にあった月額8.8万円以上という賃金の要件が、2026年10月に撤廃される予定です。最低賃金が上がり続けた結果、週20時間以上働けば自然と月8.8万円を超えるようになったためです。つまり今後は、働く時間が社会保険に入るかどうかの主な基準になっていきます。募集する側も、この変化を前提に時給や勤務時間を設計しておく必要があります。
応募を増やすには、求職者が抱える不安に先回りすることが効きます。たとえば、扶養の範囲で働きたい人向けに勤務時間の上限を選べるようにする。逆に、しっかり稼ぎたい人には社会保険に入って働く選択肢があることを示す。どちらの希望にも応えられると伝えるだけで、応募の幅は広がります。社会保険に加入する人を増やす場合、会社はキャリアアップ助成金などの支援を受けられる場合があるため、制度を調べておくと負担を抑えられます。求人票の段階で働き方の選択肢を明記しておくと、応募する前のためらいを減らせます。
人が採れない時代に大切なのは、来てくれた人に長く働いてもらうことです。年収の壁を理解し、一人ひとりの事情に合わせて働き方を選べるようにすれば、無理なく続けてもらえます。制度は今後も変わっていくので、最新の情報は厚生労働省の案内で確認してください。まずは、いま働いているパートの方がどの壁を意識しているか、一度聞いてみることから始めるとよいです。
出典:厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172724.html
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