周りが賃上げをするなか、うちは上げられない。そう悩む経営者は少なくありません。利益が増えないまま給料を上げれば、経営は苦しくなります。順番が逆です。先にムダを減らして一人あたりの成果を上げ、生まれた余力を給与に回す。この流れをつくれば、無理のない賃上げができます。
中小企業白書では、賃上げに踏み切る中小企業が増える一方で、業績の改善が伴わないまま実施する企業が過半を占めると指摘されています。同じ白書には、機械化で業務を効率化した飲食店が、繁忙月の残業時間を57時間から30時間へ減らし、正社員の基本給を3.1%引き上げ、離職率を20%超から11%台まで下げた例が紹介されています。
中小企業庁「2025年版中小企業白書」第7節 賃金・賃上げhttps://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/b1_1_7.html
生産性を上げるといっても、社員に速く働けと言うことではありません。会議のための資料づくり、手作業の集計、同じ問い合わせへの対応。こうした繰り返しの作業に、どれだけ時間を取られているかを書き出します。減らせる仕事が見えてきます。
議事録の作成、文章の下書き、データの整理。これらはAIが得意な仕事です。一人が毎日30分使っていた作業が10分で済めば、空いた時間を本来の仕事に回せます。一人あたりの成果が上がれば、その分を給与に反映する余地が生まれます。働く時間が減って給料が上がれば、社員はとどまり、新しい人も集まりやすくなります。
作業を減らして時間が空いても、その時間がただの空白になっては意味がありません。空いた時間を、客先への提案や新しい仕事の準備など、売上につながる仕事に振り向ける。ここまでやって、はじめて生産性が成果に変わります。そして、生産性が上がったからその分を給与に反映した、と社員にきちんと伝えることも大切です。努力が報われると分かれば、現場はさらに工夫を重ねます。黙って利益にしてしまうと、なぜ自分たちが頑張るのか分からなくなります。減らす、空ける、成果に変える、給与で返す。この流れを一度きりで終わらせず、毎年回していく。それが、賃上げを続けられる会社のつくり方です。
賃上げは、人を引き止め、人を集めるための投資です。ただし原資がなければ続きません。AIでムダを減らし、生産性を上げ、その果実を社員に還元する。この順番を守れば、賃上げと経営の両立ができます。まずは社内のどこに時間のムダがあるのか、洗い出すところから始めてみてください。
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